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下水道メンテナンスの必要性って?

世界の下水道の歴史は、古くは紀元前5000年頃のメソポタミア文明にさかのぼります。

日本で近代的な下水道が作られたのは、文明開化で華やぐ明治初期の東京でした。

多くの人が東京に集まり、大雨による浸水や溜まった汚水が原因で伝染病が流行したため、下水道が整備されました。

その後、数回の下水道法の改正などを経て、平成5年には下水道事業を実施する市町村が全市町村の5割を超えました。

街の重要なインフラである下水道ですが、今回は、下水道のメンテナンス義務について解説します。

下水道のメンテナンスと被害

下水道の管路施設は、暗渠(あんきょ)であるため普段は人の目に触れないので、積極的にメンテナンスすべき施設と感じないかもしれません。

しかし、下水道の管路は年々老朽化していきます。

管路の老朽化は道路陥没事故を起こす要因ともなりかねません。

管路が老朽化する年数は布設後およそ 30 年、寿命は50年程度と言われています。

また、東日本大震災を原因とする下水道の被害は甚大で、次のようなものでした。

  • 管渠(かんきょ)のたるみや蛇行
  • 沿岸部での地盤沈下による逆勾配で流下機能支障
  • ヒューム管や陶管ではクラックが発生

注目すべきは、被害が軽かった下水道や、被害が発生しなかった下水道があったことです。

液状化対策済路線では被害が軽減されていましたし、管更正工法が実施されていた路線では被害が発生しませんでした。

このように、下水道の被害を最小限に抑えられるかどうかに差が出てしまったのです。

この東日本大震災の教訓を生かすだけでなく、健全な水環境の維持や雨水利用の促進を推進する目的で、平成26年に新下水道ビジョンが策定されました。

下水道メンテナンスは社会的責務

平成27年に改正された下水道法により、下水道管理者は5年に1回以上の頻度で、腐食のおそれの大きい下水道管路の点検を義務付けられています。

これは、下水道管路が原因の道路陥没が年間約3,300件も発生していることが背景です。

しかし、下水道のメンテナンスについては、現行の水道法では「努力義務」に留まっています。水道法7条の2では、

「公共下水道管理者は、公共下水道を良好な状態に保つように維持し、修繕し、……(中略)努めなければならない。」

と定めています。

このように国の法令の文言は「努めなければならない」ですが、下水道メンテナンス義務の目的を改めて確認しておきましょう。

「公衆衛生上重大な危害が生じ、及び公共用水域の水質に重大な影響が及ぶことのないように」と下水道法がうたっているように、下水道のメンテナンスは公共の利益、もっと踏み込んで言えば人命に関わる責務だということです。

ストックマネジメントの推進

この下水道の維持管理の指針として、国土交通省では「ストックマネジメント」という考え方を策定しています。

ストックマネジメントは長期的な視点に基づいて、次の事項を目的としています。

  • 施設の点検や調査、修繕や改善を実施
  • 施設全体を対象とした施設管理を最適化

この際、下水道施設全体の今後の老朽化の進展状況を考慮し、優先順位付けを行うこととされています。

まとめ

下水道事業に携わる職員や下水道事業費用に課題を抱えている市町村もあります。

下水道費用と効果の関係は非常に難しい面もあるでしょう。

しかし、過去の自然災害や人的災害による被害を再び招いてはなりません。

パブリックコメントを利用するなど官民が協力して知恵を絞ることで、ずっと先の世代も安心して暮らせる街作りを考えるべき時代ではないでしょうか。